こんにちは! 藤川正宗です。
家づくりを考え始めていくとあれもこれもとなってしまいますが、もうちょっと深く勉強するようになると、断熱も大事なのかしら?なんて思い始めるようになり、でもどれくらい断熱すればいいのか、断熱等級ってあるけど5か6か、それとも7にすればいいのか、なんて悩み始めるようになります。
見回してみても、断熱等級5が最適、いや、断熱等級6がコスパ最高、断熱等級7は無駄、とか書いてあったり、しゃべる方もあって、ほんといろいろあって面白いですよね。
私ら工務店でも、断熱について熱心にされているところは、どれくらいにするのがいいのか、とかなり深く悩まれています。
ぼくなんかは、だらずで寒がりなんで、とりあえず断熱等級7にしとけば家中が寒くないようになるから、それでいいじゃん、と思って立てる新築は全部そうさせてもらって、やっぱり満足度は高いのですが、でもその満足度はそれまでの古いアパートやお家と比べて、のことなので、断熱等級5と6と7を体感と計算で比べて、というわけではないです。
なおさら、これから家づくりしようと考えられてる方には、体感もできないし、ホームページ見ても、YouTube見ても、やっぱり本当のところはよく分からないんじゃないでしょうか? ぼくもたぶん、同じ状況ならわからないです。というか、雪に囲まれた冬の富山で家中があたたかいということはトイレも暖かく、そんな暖かいトイレで用を足す時に感動してこれくらい断熱するのがいいのか、という体験がなければ、今のようにちゃんと断熱した家をつくることはなかったかもしれないので、やっぱりおんなじなんですね。
とはいえ、断熱等級をどれにするかは、ご予算のこともあるので好き好きではありますから、どれになってもいいかと思います。
でも、空調計画だけはちゃんとしないと、こっちはあったかいけど、あっちは寒い、結露したー、とかなってしまい、結局は満足度が低くなりがちではあります。エアコンはお客様で後で好きに付けといてくださいねー、とか、空調設計の放棄だと思うんですけど、どうなんでしょうか。
結論から書いちゃいますと、断熱等級がどれくらいであっても、まさかの無断熱であっても暖房を効かすことはできます。
空調設計というのは奥が深くて、どんな断熱であろうとも、大抵は家中に暖気を配ることはできますし、気流感をなくして、「暖房の風が気持ち悪い〜、乾燥する〜」というのもなくすることができます。
ただ、断熱が少ないと暖房費がかかる、というだけです。
なので実際に住まわれる方のことを思うと、できるだけ断熱を入れて、電気代が高すぎて暖房を切るしかない、なんてことのないようにするのが、正解かと思っています。
そして、まあ、ようやく本題になりますが、超古民家で、めっちゃ広いお家をどう暖房していくか、というのが課題の案件がありまして、端から端まで暖気を送ろうとすると、いつもの新築のように床下エアコンで温風を飛ばす、ということでは足りません。全然足りません。
なので、温水パイプを床下に取り回し配管して、その輻射熱でじんわり暖める、という暖房方法をとることにしました。
床断熱ではなくて、基礎断熱にして、スラブというか防湿コンクリートでしかないんですが、その下に板状断熱材を敷いてからコンクリートを打ち、外気と切り離します。さらに基礎内にも防蟻断熱材をいれて、その上に温水パイプを取り回しします。
2本回ってるのは、熱源から右回りと左回りの2経路を通すようにしているからです。
新築だと、断熱がかなりしっかりできるのと、面積が狭いということもあって、2周回っても4周回っても温水はそんなに冷えることもなく、熱源に戻ってきます。
それが古民家のように広い面積をあっためようとすると、1週回ってる間に温水が冷えてきて、最後のほうはあまり暖房できない状態になってしまいます。だからこそ、右回りと左回りの2経路にすることで、家中をまんべんなく暖めるぞ、という設計になっています。
熱源としては、キッチンでガスコンロを使われるということと給湯もガスが良いということで、ガスでお湯を沸かしてパイプに送る方法になりました。
灯油も電気もあるんですが、とくに電気はここの地域ではちょっとこころもとないところではあります。電気のエコキュートというと、ヒートポンプで効率良くお湯を沸かすことができる、というものではあるんですが、あまりにも寒い時はカタログ通りの効率でお湯をつくることはできなくなります。
その効率というのが例えばAPF=4ということであれば、一年間使ってみて、電気エネルギー1から4のお湯エネルギーをつくり出すことができる、という計算数値です。4というのは結構良い数字で、ガスも灯油も1です。
ただ、APFの計算には条件がありまして、
中間期加熱条件:外気温度16℃(乾球温度)、12度(湿球温度)、給水温度17度、出湯温度65度
夏期加熱条件:外気温度25℃(乾球温度)、21度(湿球温度)、給水温度24度、出湯温度65度
冬期高温加熱条件:外気温度7℃(乾球温度)、6度(湿球温度)、給水温度9度、出湯温度90度
というように、冬の外気温が6度という設定です(笑) いやいや〜、こっちの寒い時って、−6度ですよね。。。。 しかも最高気温が0度にしか上がらないことも多いですし。
こういう、地域にあわせた設備を選んでいくことも設計のひとつでもあるんですが、そういうことで、今回の熱源はガスということにさせてもらいました。
あと、こちらの古民家、かなりシロアリの被害も大きく、立地からして防蟻対策が必要になっています。ですので、板状断熱材も防蟻タイプになっています。断熱材の陰を通って木材までシロアリが上がっていくことは大いにあります。
そういえば、防蟻タイプの断熱材にもいろいろありまして、結局はそんなに薬剤が効かないからシロアリに食べられたり突破されたりするのも実際にはありまして、それを知ってか知らずか、そういうのが使われてる例も多々あります。
いろいろ広く知っておくことって、大事ですよね。
あちころ脱線してしまいましたが(笑)、とても広い面積を暖めるために、今回の古民家リノベーションでは、温水パイプを床下に回して、家中を暖める方法について軽く説明していきました。
とはいえ、すごくあったかい、というのは2月の極寒では難しいので、ベースとなる寒くない温度をつくり、あったかくしたい部屋ではお気に入りのアラジンの石油ストーブを置いてもらう、というのが実際のところになります。
じつはこの温水パイプ方式、北海道の新築でよく使われる方法で、かなり効果的ではあるんですが、こちらの地域ではあまり知ってる方も少なく、される方も少ないです。まあ、各部屋にファンヒーター置いてもらうのが楽ですからね。でも暖房代は全然違ってきます。一日中、家中を暖める、という概念というか、どこまで快適さを求めていくか、という違いもあります。
北海道での暖房代は死活問題、というか平均所得もそんなに高いでもない中で、いかに暖房代を下げていくか、という課題との闘いが延々と繰り返されています。いま北海道でされていることというのは、いろんな挑戦と失敗と反省と改善を乗り越えてきた一騎当千の猛者みたいな方法なので、同じ試行錯誤を自分でやってみるのも無駄なので、先輩にすぐ聞くようにしています。定期的に北海道へ行くのも、質問できる先輩がいるのも、そういったためではあります。
この新築での暖房は、この温水パイプで床下から暖めていくのと、ここは、という部屋にパネルヒーターを置いて調整できるようにもされています。パネルヒーターの熱源も同じくこの温水パイプから取られています。
温水パイプは4本通っていますが、新築ですから温水がそんなに冷めないので、熱源から4周回って戻る、という経路になっているからです。こういうのは、建物に合わせて、たんびたんびに設計していくことが大事で、なにも考えずにそのまんま条件の違うところにマルパクリで持ってきてもうまくいかないですよね。
ということで、いまやってる物件の暖房方法を紹介しながら、どんな断熱だろうが、どんだけ広かろうが、暖房を効かすことはできるんですよ、でもちゃんと空調設計しないといけませんけどね、というお話でした。