こんにちは! 藤川正宗です。
いま住んでる三次市が盆地のせいか、夏は熱くて、湿気じめじめ、冬は極寒、霧に沈んで午前中は陽も射さない、四国の高知から移り住んだ身からすると、なかなかつらい気候なので、どうにか快適にすごせる家にしたいな、と思いまして、「夏暑くない、冬寒くない、湿度も快適なパッシブデザインの健康住宅」をできるだけリーズナブルに提供する大工工務店を営んでいます。
快適にするだけなら、ちゃんと空調設計まですれば、かなり快適にはなるのですが、建築コストは高くなるわ、冷暖房費も高くなるわ、ということで、どうにか普通のひとでも快適なエコハウスを提供できないものかと考えに考え、パッシブデザインで太陽に素直な設計にするのはもちろんのこと、建材の選び方、経費の掛け方、経営のやり方でどかんとコストダウンをしてみました。業務量の割にひとりでやってるのも、その理由のひとつです。
最近は新築と古民家リノベーションが半分・半分になってます。新築をするから最新の住宅性能の出し方が分かるし、古民家リノベをするから古くなるとどうなるか、住み続けて最終的に選ばれる暮らし方はどうなのか、耐久性、普遍性、といったことを相互にフィードバックでき、日々切磋琢磨しています。
私自身は愛する妻と、大好きな3人の息子とで、会社となりの築90年の古民家を改修しながら、楽しく暮らしていますが、もともとは四国の高知出身で、曽祖父の代から続く病院の家系です。とはいえ、ぼく自身は医師以外の道に導かれ、ITや経営に関わりながら、製薬会社に就職しました。それなりに楽しくやっておりましたが、リーマンショックで建設業も大変、という時期に妻の実家である三良坂に移り住み、この住宅業界に関わることになりました。
幼少時より父の仕事から学んだことは数多く、救急医療が寝たきり患者を生み続けることのジレンマ、そこからリハビリで社会復帰につなげる流れを作り、ただ治療するだけからQOL、クオリティーオブライフ、生活の質を高めていくのに必要な体制を整えたり、ソーシャルワーカーの導入、すべての救急を受け入れるERの設立、チーム医療の確立、など課題に先んじて取り組んでいくことに関わることで、「健康ってなんだろう?」と深く深く思うようになっていました。
さらに、救急搬送は年間7,000件を越えるので、そのビッグデータの解析もあり、雨の日と晴れの日で脳梗塞と心筋梗塞の相関関係があるとか、何度も搬送される方の生活環境、リハビリ回復、などなど、結局のところは普段の住宅環境を良くしていけば、大半の方はしんどい思いをしなくてもすんだのにな、ということがわかってきます。普通に暮らしてる方には、万が一のことですが、私たちにはその万が一が日常的に集まり、そこから自然と導き出される答えも見えてきます。
だからこそ、いま住宅業界にいれば、つくるべき家がどうあるべきか、明らかになってきます。…なのですが、まわりを見るとそうでもないのは、残念でなりません。
あと、高校を卒業してからは、祖母と毎日のように食事を共にすることになり、いつも昔話に花を咲かせ、病院創業時の苦労話も聞かされていましたが、南海トラフ地震と同時に始まり、地震の被害と対策、建物の耐震がどれだけ大事かを嫌というほど言われて、今となっては耐震等級3にするのが迷うことなく当り前にできるのも、祖母のお陰なのかなぁと思います。いまでも柳のように揺れる家が良いという方もまだ多い業界ですから、面白いですよね。
ただ、目指すべき家の姿はあれど、設計で図面にしても、悲しいかな、現場では思ったように形にはならないんですね。
いい家をつくるためには現場第一主義で、目指すべき意義と形になるように、ひとつひとつの作業がそこにつながるようにする、施工管理が一番大切だと思ってます。それには、自分の目で見て、現場の職人と楽しく話しながら意図を伝え続け、責任を持って確かめられるようにしています。
そのため、製薬会社時代のように背広を来て歩くのではなく、いつでも現場に入れるよう作業着でおります。身長190cmとデカいですが、床下に潜りますし、天井裏にも上ります。
私は、いい家というのは、病気にならないで健康的に長生きできる家であると定義して、全身全霊、心を込めて全力で家づくりをしています。
新築では1件目からHEAT20のG3、C値0.3、耐震等級3という住宅性能を出すことができましたが、もちろんぼく1人の力と知識でできるわけもなく、先んじて挑戦し続ける先輩方から学びながらフィードバックも返し、広島での勉強会でも切磋琢磨して、毎月少しでも成長できるように心がけています。
一番はじめにエコハウスのつくり方について学んだのは、兵庫県の松尾和也師匠からで、大阪で無料の講演会で感銘を受け、外断熱と床下エアコンと小屋裏エアコンと設計を学んだのですが、内容は多岐にわたります。基本的な物理、水の性質から始まり、快適とは何か、温度と湿度だけでなく、風速、活動量、衣服量、輻射熱も関係することから、具体的な断熱設計、空調設計、プランニング、「失敗」と書いて「せいちょう」と読む数々の事例から、失敗しない家づくりを学んできました。
また、松尾師匠も年々新しいことに挑戦されるので、キャッチアップするために何年もお付き合いを続けています。他にも快適さを求めてエコハウスをつくる手法はいろいろありますが、よりリーズナブルに実現するために挑戦し続けているうちの第一人者は、松尾師匠になるところが大きいな、と思います。
しばらくして、そういえば、よくある一緒に撮らせてもらった写真というのが一枚もなかったことに気付き、姫路でご飯おごってもらった時にお願いして撮ってもらったのがこの写真です。
松尾師匠の実物件も、毎年完成度が高くなり、他の人のつくった良い建築を見ろ、年に何回行ってる??と口酸っぱく言われるので、その設計遍歴を見続けてきたといっても過言ではないかもしれません。
同窓生というか、弟子仲間と完成見学会や設計具合を見せあいっこしながら、切磋琢磨を継続しています。同じ県にいないのが寂しいところではありますが、でも隣県でそんなに離れているわけでもなく、関東からも声がかかることもありますから、楽しく学びあいっこしています。
もちろん、地元・広島でも、「瀬戸内良質住宅研究会」という、ぼくの設計のアニキ分、川端ニキの立ち上げた、通称『レモンの家の会』があり、こちらでも日常的に学びあいっこしています。実際には現場が完成したら、時間の許す限り見たり、見せてもらって、どうしてこうするのか、どうやってやったのか、どう考えたのか、などなど意見交換しながら、また次の物件に反映していく、という繰り返しです。
結局は、建築は現場が一番で、抽象化された教科書からは理論と理屈を学び、そのあとは現場で埃まみれになりながら、誇りをもてるように日々、研鑽を積んでします。
そんな経緯でお仕事させていただいてるので、手がける新築はHEAT20のG3、C値0.3、耐震等級3が当り前で、それ以下にするのは心苦しくなっています。その後、国の断熱等級もようやくG3と同様の断熱等級7までが設定されるようになり、ぼくもこれに倣って表記するようにしています。
レモンの家の会と、中の人は同じ、ということもあって、forward1985でも一緒に活動して、公民館の断熱ワークショップを数々開催したりもしています。各地でやるので、地元の三次でもさせてもらい、断熱のすごさは実感してもらいましたが、ま、なかなか注文にはつながりませんね。
そんな新進気鋭な活動を評価されたのか、県主催の省エネ住宅を普及するセミナーにも呼ばれ、地元の大工代表として、東大の前先生の前でプレゼンしたり、ディスカッションさせてもらいました。
前先生からは「藤川くん、おもしろいね、ウケるよ」(意訳)と褒められてるのかどうかわかりませんが、市井の大工にも前先生の目指されている建築が実践されていることが伝わったみたいで、それだけで良かったかな、と思います。
職業柄、人前で話すことは多いので、普段は大したこともないのですが、さすがに東大の前先生の前で発表するとなると、緊張しすぎて、いつもにも増して目が細くなってるのが写真からもよくわかります。懇親会でも、思っていたことを全部話せなかったことが、とても心残りではありますが、機会があれば、また成長した姿を見てもらいたいな、と思います。
他にも、新住協(新木造住宅技術研究協議会)やJBN(工務店協会)パッシブハウスジャパン(PHJ)などなど、たくさんの勉強会で学ぶよう、現場作業に追われる中、なんとか時間を工面して、研鑽を積むようにしています。目標は、「毎日・成長」です。
プライベートでは、茶道上田宗箇流を習い始めてから25年以上が経ち、県立大学茶道部へも毎週指導に行ってましたが、現在はお休み中です。居合道も大人になってから誘われて、はや三段となりました。日本文化とスイーツをこよなく愛す、47歳です。
最近、サウナが流行っているのもありますが、それよりその効能は備北の人にはピッタリなんじゃないかと思っています。北欧のフィンランドでサウナが日常的に親しまれているのと同じように、寒い地域で定期的に体を芯から温めることや、水風呂ではなく冬の外気浴で涼めるとか、ロウリュウの蒸気で発汗させるサウナであったり、いろいろ発見が多く、試しているところです。
いろいろもってる資格を並べてみます。
<現場系>
木造建築士試験、合格
合格してから知ったのですが、免許登録しないと建築士にはなれないみたいで、申請しても何ヶ月もかかるそうで、建築士になるのは4月からの予定です。
住宅のほか、店舗や公共施設などの木造の建築物で、延べ面積が300平方メートル以内の2階建て以下、高さ13m以下、軒高9m以下の設計や工事監理ができるようになります。
JBN省令準耐火構造利用資格
全国工務店協会(JBN)仕様の準耐火構造に準ずる防火性能を持つ構造で、外部からの延焼を防ぎ、各室で防火でき、火災保険も割引適用。柱・梁の4面あらわしが可能です
足場の組立等作業主任者
高さ5m以上の足場の組立て、解体、変更の作業指揮ができます
足場の能力向上教育
足場の組立て等作業主任者技能講習の修了後、概ね5年ごとに実施すべき教育で、最新の技術や材料、安全基準、労働災害事例などについて学び、安全で確実な足場の組立て、解体、変更作業、点検を行うための知識や技能を更新しています
木造建築物の組立て等作業主任者
軒高5m以上の木造建築物の構造部材の組み立て、屋根下地、壁下地の取り付け作業の監督・指導ができます。
第二種電気工事士
600Vまでの低圧で受電する住宅等の屋内配線設備や小規模な太陽電池発電などの電気設備の設置又は変更に係る電気工事の作業(一般用電気工作物等)ができます
(高圧受電設備や特殊電気工事等の自家用電気工作物は第一種が必要)
低圧電気取扱者安全教育
直流で750V以下、交流で600V以下の低圧の充電電路の敷設・修理及び充電部分が露出した開閉器の操作には、経済産業省の資格である電気工事士を取得していても、安全確保・事故防止のために厚生労働省管轄の特別教育の修了が必要なんです
フルハーネス型墜落制止用器具特別教育
高さが2m以上の箇所において、作業床を設けることが困難な場合で、フルハーネス型を使用して行う作業に係る業務(ロープ高所作業を除く)ができます
建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者
高さが5m以上の建築物の骨組み又は塔の金属製の部材により構成されるものの組立て、解体又は変更の監督・指導ができます
地山の掘削及び土止め支保工作業主任者
掘削面の高さが2m以上となる地山の掘削(ずい道及びたて坑以外の坑の掘削を除く。)、土止め支保工の切りばり又は腹おこしの取付け、又は取りはずしの監督・指導ができます
型枠支保工の組立て等作業主任者
型枠支保工(支柱、はり、つなぎ、筋かい等の部材により構成され、建設物におけるスラブ、けた等のコンクリートの打設に用いる型枠を支持する仮設の設備)の組立て、解体又は変更の監督・指導ができます
職長・安全衛生責任者教育
職長教育は労働者を直接指導監督する者に対する安全衛生教育であり、安全衛生責任者教育は混在作業による労働災害を防止するため安全衛生責任者に対して実施される教育です
<運転・操作系>
高所作業車技能講習
作業床高さ10m以上の高所作業車の運転ができます
小型移動式クレーン運転技能講習
つり上げ荷重5t未満の小型移動式クレーンの運転作業ができます (5t以上は移動式クレーン運転実技教習)
玉掛け技能講習
使用するクレーンの最大つりあげ荷重が1トン以上の玉掛け(吊り荷にワイヤやベルトを掛ける)作業ができます
フォークリフト運転技能講習
最大荷重1t以上のフォークリフトの運転ができます
車両系建設機械(整地・運搬・積み込み用及び掘削用)特別教育
機体質量が3t未満の「整地・運搬・積込み・掘削用」の車両系建設機械で、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるものの運転(道路上を走行させる運転を除く)ができます (3t以上は技能講習)
テールゲートリフターの操作の業務に係る特別教育
貨物自動車の荷台後部に取り付けられた昇降装置で、荷物の積み卸しなどの荷役作業に使用されるテールゲートリフターの操作(荷役作業を伴うものに限る)ができます
丸のこ等取扱作業従事者安全教育
携帯用丸のこ盤、携帯用丸のこ、可搬式丸のこ盤を使用して行う作業ができます
刈払機取扱作業者安全衛生教育
対価を受け取る業務としての刈払い作業を請け負う場合に必要な講習です
チェーンソーによる伐木等特別教育
林業や建設業で伐木作業する全員に義務づけられている講習です
振動工具取扱安全衛生教育
ピストンによる打撃機構を有する工具やエンジンカッター等の内燃機関を内蔵する工具で可搬式のものなど、チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務ができます
<石綿・アスベスト系>
一般建築物石綿含有建材調査者
住宅、店舗、工場などを含むすべての建築物について解体・改修などの前に石綿含有建材の調査が2023年に義務づけられ、この調査ができます
石綿作業主任者
アスベスト含有建材の解体など、石綿の取扱い作業を監督・指導ができます
ひとまず並べてみましたが、アーク溶接とか、救急救命とか、いろいろあとから付け加えていきたいと思います。
小さな大工工務店であっても、高気密・高断熱で高性能な家づくりができることを、ヒートショックで倒れるなんてことのない家づくりができることを示すために、さくら建築は設立されました。
円も所縁もないゼロからのスタートでも実現可能であることの実践とするために、2坪のプレハブハウスを借りて、そこを事務所として始まりました。
藤川正宗は、中学卒業してすぐに建築の道に入ってどっぷり職人として生きてきたわけではありません。まったくの異業種からの転職です。
しかし、木材に墨を打って、手刻みで継手を作り、昔ながらの家づくりをする棟梁についたのを始めに、10年以上を建築の世界ですごして参りました。
経験が足りないからと、ひとの2倍働き、ひとの2倍のスピードですごして参りました。
そんな姿を見て、手伝ってやろう、と言ってくれる仲間に出会え、一緒に働いています。
全国各地にも、学び合う仲間が増えてきました。
もちろん、がちがちの住宅性能だけではなく、間取りのレイアウト、デザイン、インテリアは全国の工務店に学び、心地いい自然素材を使った住宅を、徹底的にコスト削減することで、リーズナブルに提供していく仕組み作りをしてきましたし、これからも続けて参ります。
愚直に、ただ前だけを向いて、一歩ずつ