こんにちは! 藤川正宗です。
夢のマイホームは、家族との絆を深めるために、注文住宅にするという方が多くいらっしゃいます。選択肢のひとつとして、間取りプランを平屋にしたのに「失敗したわ~(꒪Д꒪) 」という後悔はしたくないですよね。
最近増えてきたのが、平屋の間取りプランです。平屋にすることで、たくさんのメリットがあります。もちろん、デメリットもありますし、あまり深く考えずに間取りをプランしてしまうと、住みにくいマイホームになってしまいます。間取りについて、どれだけ深く考えたか、が住み始めてからの「こんなはずじゃなかったのに〜」をなくすことにつながります。敷地や住まい方、家族構成などを踏まえて個別に間取り検討していくことが必要ではありますが、平屋の間取りプランを設計するにあたって大切にしているポイントを「平屋の間取りプランの失敗で後悔しないための6つのポイント」にまとめてみました。
2階建てに比べて、平屋の間取りは横方向の面積が広いので、ともすれば建物の中心部に光や風が届きにくくなってしまいます。採光と通風の確保が平屋の間取り設計での大きな課題となっているんですね。大きな掃き出しの窓をつける、つまり大開口サッシで部屋の奥までサンサンと照らすことが定石になっていますが、最近では、中サイズの窓を腰から上の高さ、天井につけるくらい高くすることで、壁面にやわらかく反射させながら光を取り入れる設計手法が増えてきています。「差し掛け屋根」といって横から見ると「入」の字になってる屋根だと、とても高い位置に窓を配置することができ、採光の効率が最高ランクになってきます。天窓はさらに採光することができるのですが、直接的なので、強すぎる夏の日差しへの対処、防水対策についても考慮しなくてはなりません。
中サイズの窓だと通風で不利になるかと思われますが、じつは窓からの通風で大切なのは、大きさよりも向きと高さと形です。パッシブデザインでは初めに習う基礎的なことではあるんですが、風がどちらから吹いてくるかは、地域ごとのデータによって予測できます。ですから、単純に、南北に窓を配置すればいい、というわけでもないのです。そして、高さも重要です。暖かい空気は上に向かうので、同じ空間であれば上の窓から抜け、それと同じ容量の空気が下の窓から入ってきます。これは重力換気とも呼ばれている設計手法です。さらに、「中庭」を使うことで、建物の中心部へも光と風を呼び込むことができるのです。
平屋の間取りプランを考えるときに動線はとても大切な要素です。階段がないことを生かした回遊動線の間取りか、平屋ならではの長い廊下を使った直線動線の間取りか、この2つです。回遊動線の間取りは、どの部屋を中心にするかが重要になります。家事を楽にすることを重視する場合は、キッチンを中心にする間取りが良いです。玄関やパントリーから、キッチンに通りやすく、家事動線が短くなります。また、家の中心に中庭がある間取りにすれば、採光の問題を解決できます。
廊下を中心にした直線動線の間取りは、公私を分ける境界線にもなるため、廊下幅を広めに確保すると良いでしょう。広い廊下は、ただの移動空間にせず、収納等の使い方を兼ねるといいのです。また、突き当たりを窓として外を見えるようにすると、行き止まり感の解消された間取りにできます。
平屋の住み心地は、公私の間取り空間をいかにうまく切り分けるかが大切です。例えば、玄関からダイニングやリビングに直接入るメインの動線と、廊下を通って寝室へと向かうプライベートな動線を作ることで、空間を切り分けることができます。もちろん、ダイニングのすぐ隣にキッチンを配置することで、家事の効率も配慮できます。
平屋ならではの空間の広がりを生かして、まっすぐで長い壁面収納が設けられた間取りにすることもでき、片付け問題の解決になります。廊下と兼ねることで、移動しながら片付けたりものを出したりすることができる、効率的な動線を計画できます。例えば、細長い家の中心に、まるで背骨のような廊下を兼ねる壁面収納を配置された間取りにすると、各部屋からアクセスしやすい、各部屋に入ることなく片付けができるようになります。日々の家事は、片付けることに終始しがちです。家事をラクにするには、いかに片付け、収納を効率的にできるようにするかが大切になります。壁面収納の使い方として、玄関周辺ではシューズクロゼット、キッチン附近ではパントリーや食器棚、リビングでは書籍や小物、作業台を造り付ければPCスペースにも活用できるなど、間取りに位置によっていろんな用途が広がります。
平屋の間取りプランでは、上下階への移動がないので、家事動線をコンパクトにまとめやすい、というメリット、利点があります。家事にかかわる水まわりを一ヶ所に集約する間取りなら、洗濯機から洗濯物を干すテラス、衣類を収納するクローゼットまでの動線を短くコンパクトにすることで、家事のしやすい間取りプランとなります。
平屋の外観の美しさを左右するのは、屋根の設計です。深くて低い軒にすることで美しくなります。逆に、妙に短くて高い軒はちんちくりん。この美しさを数字としてあらわすと「軒先高さ2.5m以下」。屋根の一番高いところは通常だと、4mから5mになります。これを、半分よりも低くすることで美しい建築物になるのです。
平屋にすることで、外壁に雨がかかりにくく、痛みが少なくて済むというメリットも、夏の暑くて強い日差しをさえぎることができるのも、深くて低い軒があってのことです。外壁のメンテナンスについては、2階建てに比べて面積が1.7倍以上になることを思うと、なるべく劣化を少なくさせて、長寿命、高耐久としていくことが、トータルメンテナンス費用の削減につながります。家は建てたときだけではなく、生涯を通じて光熱費、メンテナンスと、どのくらいのお金がかかるのかということを配慮していきたいのです。
軒下空間を心地よく感じられるのも、日本人の心であり、平屋の特徴です。軒の出が1mまでは法律的には建築面積に入らないという点を活用することで、1m以上も軒を出したいときには縁側という室内空間をつかった間取りプランがあります。細長いなら、縁側、まとまった四角い空間があるならテラス、というように、外とのつながりを感じられるのに室内だから安心感もある間取りの実現には不可欠になってきます。もちろん、それも深くて低い軒を付けることが前提になってきます。
人通りが多い敷地に平屋を建てると、外からの視線が奥の部屋まで通りやすく、プライバシーが保ちにくい、というデメリットもあります。一つの解決策として、塀を建てたり、生け垣、格子や簀戸を立てるということもありますが、これでは威圧感があったり、近寄りやすいという平屋のメリットを消してしまいかねません。
これを間取り設計で解消しようとすると、プライバシーを確保したいLDKを中心に配置してしまいます。光が入ってこないという点については、切妻屋根ではなく、四方に軒が出ている「方形屋根」で周囲に囲われた感を出しながら、天窓で採光を確保することも設計できます。
軒先が目に近いということもあり、デザインとして雨どいをつけたくない、という意見もありますが、軒が深くて低ければ、水撥ねの外壁への雨掛かりも少なくなるので、雨どいがなくてもよくなります。
室内で家族と過ごしながら、季節ごとに変化する光や風、木陰にたたずんでいるように、自然の気持ちよさを肌で感じることができます。庭や周囲の自然との調和を楽しめる間取りプランを目指していきましょう。
平屋の間取りの特徴として、すべての部屋が外部と水平でつながっている、という魅力があります。その魅力を存分に生かすには、間取りの設計をするときに、中と外を気軽に行き来できる仕組みが必要になります。例えば、室内にすこし広めの土間をつくる間取りなら、半分は屋外のように楽しめる多目的空間になるので、人気の高い間取りプランです。住宅雑誌などでもよく取り上げられています。家族が集まるLDKを土間にすることで、外部とダイレクトにつながれることと、メンテナンスもしやすい状態で薪ストーブを設置することもできます。つまり、薪の搬入、掃除、灰の廃棄がとてもやりやすい間取りプランになります。このために必要なのは、「大開口」+「LDKが土間」という設計ポイントです。どちらかが欠けると、LDKに大開口をつけたのに、外に出にくいようだと、平屋の魅力が半減してしまいます。これは残念ですよね。
平屋の間取りにすると、家全体でつながりを感じられることがメリットであり、デメリットでもあります。どういうことかというと、仕事の空間とプライベートな空間は、できれば分けていきたいです。お友達が集まるLDKと寝室などの空間を分けたい、ということもありますよね。そういうときには、土間をアプローチとする、「通り土間」という間取りの設計方法があります。さらに、中庭との合わせ技で、光と風を取り込むこともできてしまいます。ともすれば、平屋の間取りというのは、うまく設計しないと家の中央部に、光と風が入りにくくなってしまいますが、そのデメリットを解消する手法なのです。もちろん、敷地の南側を空けても、隣家の影になって採光がとれないという場合でも、中庭を配置することで、陽当たり問題を解消することができます。
また、地域とのつながりを保ちたい、というニーズにもこたえられるのも、平屋の特徴です。少子化や核家族化でこれからは、家族だけの力で生き抜くのではなく、地域コミュニティ全体で協力し合いながら暮らしていくことが求められてきます。
人生100年時代に向けて、それにふさわしい家づくりをするならば、こうした長期間のスパンで時代がどう変化していくか、という視点での間取り設計も大切になってきます。建物の高さが低く、周囲に圧迫感を与えない平屋は、地域に溶け込みやすく、近寄りやすさを演出できる間取りが可能です。道路側に開口部をつくり、気軽に出入りできる縁側や土間空間を玄関手前の軒先に配置する間取りなら、気軽に訪ねてくる人とのコミュニケーションがしやすい間取りプランになります。日々のあいさつや、ちょっとした会話の積み重ねは、かけがえのない安心感や絆になっていきます。
省スペースの間取りプランでは、一般的に廊下をつけないのが鉄則です。しかし平屋の間取りプランでは、廊下をつけることで解決する問題が意外と多くあります。まず廊下を緩衝帯にして公私を分けるという間取り。段差のない平屋では、公私の空間を階でわけられないという間取りの制約があるからです。
この場合、廊下を家の中心に配置する間取りにします。さらに 1 M ほどの幅を持った広めの廊下に本棚や、ウォークインクローゼットを兼ねると、廊下に移動空間+αの役割を持たせることができます。平屋の間取りでは、廊下は、各部屋に光を届ける、明かり取りの役割も果たしてくれます。廊下に高窓を配置して、らんまを通じて光を届ければ、家全体が明るくなります。
コートハウスという間取りプランは、平屋の中でも人気の間取りプランです。ただし、隣家の二階から覗かれてしまう場合は、全ての部屋のプライバシーを確保しにくくなります。そんな時は、家族の個室を閉じられた一箇所にまとめる間取りも解決策です。家の中心に LDK を配置して、寝室を日当たりの良い南側にまとめてしまいます。ただし、閉鎖的に感じさせないように、各個室と一体になるように廊下で全体をつないでいます。また、廊下は LDK 側の壁面に収納を作ることで、寝室との緩衝帯の役割を果たすことができます。
平屋の間取りプランといえば、恵まれた条件の広い敷地を十分に生かして建てられるイメージがあるかもしれません。しかし、最近は、家事のしやすさや家族間のコミュニケーションのとりやすさといった観点から、敷地面積はあえて使い切らずに、小さな平屋を立てるケースが多くなっています。
小さな平屋では、なるべく廊下を作らずに、やっと部屋を直接行き来できる間取りにすると無駄がありません。また、リビングに大開口の掃き出し窓やテラスをつけて中と外を視覚的につなげる、リビングとダイニング、キッチンをまとめて大空間にする間取りなど、小さな家でも開放感が得られる工夫をすることができます。
家というのはただ広ければいいのではなく、あなたの夢をかなえることが大切です。敷地が70坪以上あったとしても、建物の床面積はやりたいことに必要な広さがあれば良く、30坪程度のコンパクトな間取りの平屋でも充分なんです。例えば、建物をL字形や[く]の字型の間取りにして、庭を囲むようにリビングやダイニングを配置します。庭とのつながりが濃くなり、視界がよく通るので、開放感のある間取り空間とすることができます。廊下は最小限にすることで、間取りの無駄をなくし、動線もスムーズになっていきます。
最近増えてきた平屋の間取りプランを設計するにあたって大切にしていることを、「平屋の間取りプランの失敗で後悔しないための6つのポイント」としてまとめてみましたが、いかがだったでしょうか?
平屋には、たくさんのメリットがあります。もちろん、デメリットもありますし、あまり深く考えずに間取り設計することでデメリットが増幅してしまうこともあります。夢のマイホームなのに、これは悲しいです。だからこそ、間取り設計を上手にすることで、デメリットをかすませることにつなげたいのです。
敷地や住まい方、家族構成など、いろんな条件を個別に検討して間取りを設計していくことが絶対に必要ではありますが、あなたが平屋の間取りプランを考える際の参考にしていただければ幸いです。