(ダイキンさんの施工事例写真)
こんにちは! 藤川正宗です。
(ずいぶん前に書いたコラムでしたが、当時と状況も変わってきたのでリライトしてみました)
個別の部屋ごとに空調するのではなく、家全体を冬暖かく、夏涼しくするのを「全館空調」(ぜんかんくうちょう)と呼んでいますが、この全館空調について、ちゃんと説明をしておかないといけないなぁと思いながら、遅くなってしまってごめんなさい。
その全館空調を、普通の家庭用壁掛けエアコン1台か2台でやってしまおう、というのが今の高性能住宅での風潮です。
エアコンについてお話したり、ご質問を受けたりしている中で、家庭用のひとつの商品として「アメニティエアコン」というのがありまして、「アメニティエアコンって、なに?」とか「アメニティエアコンっていいの?」と何回かご質問いただいたので、ご説明いたします。
アメニティエアコンというのは、壁や天井に埋め込むタイプのエアコンです。これが一般的な壁掛エアコンとの違いです。
写真のように、雰囲気をこわさないよう和室にうまく入れ込んでる事例が多いので、見たことあるでしょうか。
また、見えるのは格子だけ、存在感がなくなるので、アトリエ系デザイナー設計の家にも重宝されています。住宅雑誌に載るかっこいい家でもよく使われています。
普通の家庭用壁掛けエアコンは、みなさんの家にもあるからおわかりのとおり、圧倒的な存在感を主張しています。
昔の部屋だと十分なクローゼットもないから、収納するためにタンスを置き、本棚も置き、ラックも置き、とどかどか置いたその隙間に壁掛けエアコンが並んでる状態であれば、そこまで目立つこともないかもしれません。
しかし、いまから夢のマイホームである、新築の注文住宅を建てることになると、必要な収納空間は確保されて、余計や家具はなく、むしろ置く家具はインテリア性を重視して、リビングはなるべく広くてすっきりとした空間になりますよね。そうしたいですよね。ウチのお客様は皆様そうおっしゃいます。
広い空間ということは、壁も広くなってきます。そこにドデンと壁掛けエアコンがあると、圧倒的な存在感を発揮するのです。それがイヤだな、と思う人も多いです。アトリエ系デザイナーの方は特にそうですね。わかります。
そんな、室内インテリアの雰囲気をこわさないようにしたい、という想いを受けて誕生したのが、アメニティエアコンです。なので、壁掛けのような存在感がなく、すっきりと壁や天井の中に収めてくれます。空力学的にもちゃんと考えられたたて格子カバーも用意されていますから、ショートサーキットすることもなく、本体が直接見ることもありません。すごくいいです。
とってもいいんですが、もちろん、デメリットもあります。
アメニティエアコンは、いまのところダイキンというメーカーでしか製造していないので、安売りされることを見たことありません。
…だったのですが、最近は値段もこなれてきて、壁掛エアコンの最上級機種よりも安くなってきました。
これは、基本的にはずっと同じ仕様で、そんなに大きな変更もなく製造を続け、しかも昨今の全館空調がもてはやされるようになってきたことから、仕入値がかなり安くなってきました。全館空調を小屋裏エアコンでやろうとすると、ダクトや送風機も使いますから、トータルでみると、同じくらいの金額になってくる、というのが最近の状況です。
エアコンというのは10年〜15年で交換時期が来ます。
昔の、昭和時代の、木目がかっこいい家具調のエアコンとかあって、ものすごい音が大きいのが何十年も動いているのを見たことありますが、最近の機種は構造も効率もまったく違ってるので、15年くらいでかならず交換することになります。もちろん、使わなければ交換する必要もないんですが(笑)近ごろのこの暑さと寒さだと、使わざるを得ないですよね。
で、その交換時期に、また同等機種を入れ替えるわけですから、また割高の商品を買うことになります。
さらに、交換作業も、壁に入り込んでるわけですから、普通の家庭用壁掛けエアコンに比べると難しいので、もちろん割高です。
これを嫌って、普通の家庭用壁掛けエアコンにしてしまう方もいらっしゃるようです。
…だったのですが、最近は値段もこなれてきて、かなり安くなってきました。
しかも、これはメリットでもあるんですが、メンテナンスがしやすい、というのもあります。フィルター掃除はイメージしやすいかもしれませんが、その奥にある熱交換フィンやドレン排水部分が分解しやすく、しっかりと全部を洗浄できるようになっているんです。使い続けることを念頭に設計されているので、こういう耐久性に関わるところも考えられているんですね。
将来、交換することも視野に入れて、交換作業がしやすいようにアメニティエアコンのまわりにスペースを用意してあればいいのですが、そうでない場合や、アメニティエアコンを設置してから壁を作るなんてことも建築現場ではあったりします。そんな場合は、エアコンを交換するために、壁や天井や周辺を剥がしながら取り付け、また補修する、なんてこともあります。
そんなことしてたら100万円くらいかかるー、むりー、ということで結局は壁掛エアコンに取り換えた、ということもあります。
…だったのですが、本体を設置する場所をちゃんと考えて設計し、ダクトも含めて、広い小屋裏や空調室など、メンテナンスしやすいところに設置すれば、なんてことない交換費用になります。
これはダイキンさんのカタログからの引用になりますが、左の構成が、たぶんアメニティエアコンのイメージかもしれませんが、左の構成にすると、壁や天井との取り合いが無くなるので、メンテナンスがしやすくなります。
ぼくも昔は左と真ん中の設置方法しか知らずに、使いにくいなぁと思っていたのですが、右の設置方法で、しかもダクトも目の届く、手の届く範囲での設置をすることで、交換などのメンテナンスがしやすくなることがわかってきたので、アメニティエアコンもありだと思っています。
さらに、給気のところを一種換気の室内給気や、空気清浄機を入れることで、冷暖房負荷を下げたり、きれいな空気を循環させる仕組みにしたり、壁掛エアコンよりも柔軟的に運用しやすいメリットもあり、松尾式小屋裏エアコンのバージョン3では、アメニティエアコンを使うようになっています。ということで、ちゃんと設計していれば、これもデメリットにならない、ということです。
アメニティエアコンのデメリットを並べましたが、どれも最近ではデメリットでもなく、アメニティエアコンを使わない理由にもならなくなってきました。
以前は価格が高かったのがあったのですが、これは、高断熱高気密住宅が増え、全館空調の認知も増え、これが壁掛エアコンの1台か2台でできることを知る人が増えてきたことで、ここまで価格が下がってきたんだと思います。
いやぁ、ほんと、時代って移り行くものなんですねぇ。
結論、アメニティエアコンも、ありです(笑)
それでは、みなさんの家づくりが良いことになりますことをお祈りしております。こんだけ長文のコラムを書くっていうのも、そういう気持ちがあるからなので、ウチに依頼しなくてもいので、できるだけちゃんとした性能の家を建ててもらえるようにされてください。
それでは、そいぎんた! ばいなら〜