SDGsに本気で取り組む企業として、横浜の大川印刷 さんの名前が思い浮かんだ人は、相当な事情通ですね。弊社が大川印刷さんと出会ったのは2018年のことでした。お題目だけのSDGsをとなえて、バッチをつけて知った顔するのではなく、本気の本気で地球環境を守るために印刷材料から廃棄物、リサイクル、組織作りまで徹底的に改革される大川社長の姿に感銘を受け、大川社長から直接「ぜひ一緒にやっていきましょう」と声をかけられ、弊社でもできることから始めて参りました。
あれから数年が経ち、少しずつではありますが、できることが増えてきましたのでご紹介いたします。
まず、地域に根ざした工務店という仕事は、とてもSDGsにかかわりの深いことが多く、家づくりを通じて地球環境を守るお手伝いが、結構な影響力で行えるということに、やってみたからこそ感じることができました。はじめは、ちいさい工務店に一体なにができるんだろうかと、思っていました。しかし、マイホームという大きくて、長期にわたって生活スタイルを左右するものは、長年にわたって地球環境に影響を及ぼしつづけるのです。その影響が、良い方なのか、悪い方なのか、その方向づけをできるのが工務店という立花のです。
さらには、これからの時代は「新築一戸建て」を建てる意義ということにも向き合わなければなりません。
我が国の世帯数に比べて圧倒的に多くなった一戸建て住宅は、すでにある住宅で国民全員に行き渡る計算になります。そうした時代に、ざわざわ「新築で一戸建て住宅をつくらないといけない」理由というものを、SDGsの観点から説明しなくてはならないのです。あとで後述します。
そもそも、地域の方々に、さくら建築がSDGsなことをやってると知っていただいたきっかけは、路線バスの車体広告だというのが多いかと思います。
一家に一台どころか、ひとりに一台の自家用車が必要な地域ではありますが、それでも地域の公共交通機関を維持していくことで乗客が集約化されれば、二酸化炭素排出が少なくなることと、自動車を運転できなくても地域で生活しつづけることができる、というSDGsにつながるという思いから、三次の地域でも継続的に運行してくださる備北交通さんへのバス広告を出稿しています。このことでバス路線が維持されることを望んでいるからです。
バス広告はきっかけでしかありませんが、国連の定めたいくつものゴールを見据えた目標設定にそった取り組みについて説明していきます。
そもそも、SDGs というのはなんぞや、というところからの説明になります。「SustainableDevelopmentGoals」の略で、直訳すると「持続可能な開発目標」となります。「誰一人取り残さない(leavenoonebehind)」持続可能でよりよい社会の実現を目指すという世界共通の目標です。2015年の国連サミットにおいて、全ての加盟国が合意した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で掲げられました。2030年を達成年限とし、17のゴールと169のターゲットから構成されています。
17のゴールは、(1)貧困や飢餓、教育など未だに解決を見ない社会面の開発アジェンダ、(2)エネルギーや資源の有効活用、働き方の改善、不平等の解消などすべての国が持続可能な形で経済成長を目指す経済アジェンダ、そして(3)地球環境や気候変動など地球規模で取り組むべき環境アジェンダといった、世界が直面する課題を網羅的に示しています。SDGsは、これら社会、経済、環境の3側面から捉えることのできる17のゴールを、統合的に解決しながら持続可能なよりよい未来を築くことを目標としています。
前身のMDG(sMillenniumDevelopmentGoals:ミレニアム開発目標)は主として開発途上国向けの目標でしたが、SDGsは、先進国も含め、全ての国が取り組むべき普遍的(ユニバーサル)な目標となっています。(図1)しかしながら、これらの目標は、各国政府による取組だけでは達成が困難です。企業や地方自治体、アカデミアや市民社会、そして一人ひとりに至るまで、すべてのひとの行動が求められている点がSDGsの大きな特徴です。まさにSDGs達成のカギは、一人ひとりの行動に委ねられているのです。
我が国は脆弱な立場にある一人一人に焦点を当てる「人間の安全保障」の考え方を国際社会で長年主導してきました。「誰一人取り残さない」というSDGsの理念は、こうした考え方とも一致するものです。
2019年9月に開催された「SDGサミット」で、グテーレス国連事務総長は、「取組は進展したが、達成状況には偏りや遅れがあり、あるべき姿からはほど遠く、今、取組を拡大・加速しなければならない。2030年までをSDGs達成に向けた『行動の10年』とする必要がある」とSDGsの進捗に危機感を表明しました。2020年、新型コロナウイルス感染症が瞬く間に地球規模で拡大したことからも明らかなように、グローバル化が進んだ現代においては、国境を越えて影響を及ぼす課題に、より一層、国際社会が団結して取り組む必要があります。SDGs達成に向けた道のりはまだまだ遠く長いままです。だからこそ、「行動の10年」に突入した今、私たち一人ひとりにできることをしっかりと考え、一歩踏み出す姿勢が求められています。
そこで、さくら建築では自分たちに出来ることとしてSDGsの17のゴールのうち、以下の11項目について家づくりという仕事を通して、重点的に取り組んでいます。
・目標3 すべての人に健康と福祉を
・目標4 質の高い教育をみんなに
・目標5 ジェンダー平等を実現しよう
・目標6 安全な水とトイレを世界中に
・目標7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
・目標8 働きがいも経済成長も
・目標10 人や国の不平等をなくそう
・目標12 つくる責任 つかう責任
・目標13 気候変動に具体的な対策を
・目標15 陸の豊かさも守ろう
・目標16 平和と公正をすべての人に
それぞれの取り組みについて、個別に説明します。
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
年間を通した室温の上下幅が、健康を左右する大きな要素となっていることが近畿大学の岩前教授の研究からも明らかになり、健康寿命(生き長らえる寿命ではなく、健康であり続けられる人生期間)を長くするには、室温を寒くしない、具体的な数値にすると16度以下の室温にしないということが必須になっています。
さくら建築では、住宅設計時に温熱計算シミュレーションを行い、24時間、365日、22度を保つために無理のない冷暖房費(年間5万円以下)になるかどうかを検証しています。そのためには、高断熱高気密という基本的な住宅性能をあげること、すくない台数のエアコンでの冷暖房計画にもとづき設計しています。
いわゆるヒートショックといわれる、急激な室温の変化で血圧が乱高下することで心筋梗塞や脳梗塞を防ぐためにも、冬場の室温を、どの部屋においても一定に保つのは絶対に必要なことになります。一般的には、ヒートショックが取り上げられがちですが、ヒートショックがおきる前段階でも、慢性的な血圧上昇や心肺機能の疾患など、室温の急激な温度変化が、健康に大きな悪影響を与えています。
関連してるように見えないので、関係ないことだと思われがちですが、室温を一定に保つことは、湿度を一定に保つことにもつながります。湿度はカビやダニの発生に関わることから、日常的にカビやダニがいる家では、アレルギーやアトピーにもなりやすくなります。
すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する
教育は積み重ねだといわれています。40才からいきなり目覚める、ということはなかなか難しいものです。
新たな分野にすんなり挑戦するためには、小さい時から学ぶことに抵抗感なくすことが大切です。本に親しむ、すぐにとりかかれるなど、大人になっても常に学びつづける環境づくりが必要になります。
子供部屋に「勉強という苦痛」を押し込めるのではなく、家族みんなが集まるダイニングのような空間で、常に学びと発見に触れられるようにしていくことが、お子さんはもちろん、親御さん自身の成長にもつながっていくと思って設計しています。
ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う
女性が不利な条件になりがちな業界ではありますが、さくら建築では、家づくりや経営の方針決定については女性の意見を十二分に取り入れています。働きやすさを保つために、柔軟な勤務体系や、自由な雇用形態に対応しています。育児について女性だけに担当するのではなく、男性も積極的に関わるのが当たり前というスタンスで、育児休暇やフレックスタイム制を取り入れ、自社のみならず、取引業者にも推進しています。具体的な例として、朝8時までに現場へ来て作業開始というのが当たり前とされていますが、お子さんの送り迎えに応じて、作業時間をシフトすることで対応しています。
また、これはさりげなく進めるのでわかりにくいとは思いますが、お客様とのお打ち合せでは、男性主導になるのではなく、女性側のご意見を反映させた家づくりの設計になるようにしています。ここのさじ加減は難しいのですが、お二方のご意見をお聞きしながらも、どうしても相反する要望になってくる時もあります。そうした際には、どちらを優先させていくのが良いのか、といったところになってきます。
すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
給水工事においては、公共水道の安全性を確保するためにも、上水道と井戸水を混合配管する「クロスコネクション」を絶対に禁止しています。どれだけ強くお客様から要望されたとしても、断固としてお断りすることとしています。
排水工事については、生活排水を河川にそのまま放流することは禁止して、かならず下水道への接続か、合併浄化槽で処理した後に河川へ放流することを絶対条件として家づくりを行っています。
蛇口をひねれば飲むことができる水が出てくるのが当たり前となっていますが、世界的に見ればこの状況は奇跡的な環境だということを忘れずに、法令遵守はもちろんのこと、いつまでも守りつづけるための努力を惜しんではいけないと思っています。
すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
住宅におけるクリーンエネルギーの確保は、太陽光発電を屋根に設置することになります。
さくら建築では、太陽光発電を標準仕様として、基本的には全戸で太陽光発電パネルを設置しています。
包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
国内及び各国家間の不平等を是正する
持続可能な消費生産形態を確保する
気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
高断熱な住宅性能にすることで、冷暖房費を削減することにつながります。これが直接的に電気を使わない、エネルギーを使わない、ということになっていきます。
火力発電所や原子力発電所でつくられた電気を、膨大な伝送ロスを差し引いて使うのではなく、ご自宅の屋根で発電した電気を使うことで、一次エネルギーを半分以下に抑えることができます。
陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する